シングルパパ、Big Daddy、時々旅人

会社では部下や若手社員のBig Daddy、家では二人の子どもをワンオペで育てるシングルパパ。そして趣味は海外旅行。人生に福あり。

嫁さんの病気のこと 13 あの時のこと

家に帰り、子どもたちに晩ご飯を食べさせている時に家の電話が鳴った。病院からで、「奥様が危篤状態です。早く来てください」と。電話が鳴った瞬間に事態は分かっていた。この数週間、最も恐れていたことだ。すぐさま車で子どもたちと病院に向かう。

病院に着くと、嫁さんは酸素マスクをしていて息をするのも苦しい様子。話しかけても返答はない。前日に一緒に娘のバスケの試合を見に行き、酒を飲みながら楽しく話した嫁さんが、病院のベッドで危篤状態だ。大恋愛の末に結婚し、一生の伴侶になるとお互いに誓った嫁さんが最期の時を迎えている。余命宣告をされて以来、覚悟はしてきたつもりだけど、受け入れられない。

四国の嫁さんの家族と、九州の僕の両親に電話をして、危篤である旨を伝える。また嫁さんの一番の友人である隣の家の奥さんに連絡をして、病院にきて欲しいとお願いした。嫁さんは話ができる状態ではないが、こちらから一方的に「母ちゃん、頑張れ!」「まだだよ」と話しかける。何となくだけど、言っていることは分かっているようだ。

隣の奥さんが到着し、いろんな話を始めた。面白い話や最近起こったことなど。だから、まだ行ってはいけないと。段々と嫁さんの心拍数が上がり、ますます息が苦しい様子。酸素マスクを外したがるので、子どもたちが「ママ、ダメでしょ!」「母ちゃん、だーめ!」と言って、酸素マスクを戻す。

心拍数が180を超えてきた。全速力で走り続けてる感じだ。ずっと嫁さんに「頑張れ」と話しかけてきたが、こちらが「頑張れ」と言うから、こんなに頑張っているんじゃないか?嫁さんは病気になってから6年間、一度も弱音も吐かずに頑張ってきた。常に家族や周りの人のことを気遣ってきた。もう十分に頑張ってきたんじゃないか。

子どもたちを病室の外に呼んだ。「ママはずっと頑張ってきた。本当に辛そうだよ。もう頑張らなくてもいいんじゃない?」。こんな問いかけを小学生の子どもたちにするのは酷だが、母親の余命宣告もきちんと受け止めてきた子どもたちなので、ちゃんと話しをしたかった。子どもたちは意味を理解し、泣きながらも同意した。

そして家族全員で嫁さんの元に戻って、子どもたちが泣きながら伝えた。「ママ、今まで本当にありがとう。もう頑張らなくてもいいよ。ママ、大好き」。そして僕は「子どものことは俺がちゃんと面倒みるから、心配しないで。本当に本当にありがとう。愛してるよ。」と伝えた。すると、200まで上がっていた嫁さんの心拍数がすーっと下がり始めた。180、160、140と下がり続け、苦しそうだった嫁さんの顔が安堵の表情に変わった。

そして、嫁さんは息を引き取った。

 

俺と結婚してくれて、ありがとう。

この素晴らしい子どもたちを生み育ててくれて、ありがとう。

家族を幸せにしてくれて、ありがとう。

そして、俺を愛してくれて、ありがとう。

これからも一生愛してる。

 

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