子どもたちと一緒に嫁さんの最期の瞬間に立ち会った。「もう頑張らなくていいよ。ありがとう。」と伝えると、200近くまであった嫁さんの心拍数が急に下がり始め、苦しかった表情が和らぎ、そして永遠の旅に出た。
その直後に息子がぽつりと言った。
「母ちゃんは自分たちを忘れることもなかったし、寝たきりになることもなかった。だから、これで良かった。」
脳の大半が腫瘍に侵されていたので、その可能性は十分にあった。それでもいいから生きていて欲しかったと思うのは僕も子どもたちも同じだったけど、息子はこの瞬間に自分自身に言い聞かせることで、何かを乗り越えようとしたんだと思う。
大のママっ子で、甘えん坊。前の日まで嫁さんにベッタリだった8歳の子どもが、僕らの心を救ってくれた。
今も僕は嫁さんのことで精神が不安定になることが多々あるけど、繰り返しこの息子の言葉に救われている。