シングルパパ、Big Daddy、時々旅人

会社では部下や若手社員のBig Daddy、家では二人の子どもをワンオペで育てるシングルパパ。そして趣味は海外旅行。人生に福あり。

嫁さんの病気のこと ⑥余命宣告

嫁さんが携帯の使い方が分からなくなることもなく、再び平和な日々を送っていた2015年11月某日。

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夜中にふっと目を覚ますと、一緒にベッドで寝ていた嫁さんがいない。そして下から僕の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。一階に降りて行くと、風呂場の床に嫁さんが座っていた。風呂に入りたいけどお湯の入れかたが分からず、シャワーの使い方も分からないという。とにかく嫁さんを説得して風呂場から出て、一階のソファで寝かしつけた。この時、朝の4時。車の中から病院の救急外来に電話をするも、主治医の先生が出勤してみないと、きちんとした処置はできないとのこと。朝の9時に行くことにした。

朝7時頃に子どもたちが起きてくると、ソファで寝ていた嫁さんも目を覚ました。子どもたちの「おはよう、ママ。何でここで寝てたの?」という問いに対して、嫁さんの返しは「○▼※△☆▲※◎★●・・」。ロシア語のように聞こえる言葉を話し始めた。これはマズイと思い、子どもたちに朝ご飯を食べさせて早々に学校に行かせた。

その後すぐに病院に行こうとしたが、嫁さんが意味不明の言葉で反論してくる。こっちの言っていることは理解できるので、状況を説明し、何もなければ直ぐに家に帰ってくることで合意。車で病院に向かった。早い時間に病院に着いたが、予約がないので、待ち時間が長い。その間も嫁さんが意味不明の言葉でずっと喋っているので、すっかり注目の的に。気を利かせた看護師さんが担当医師に話しをしてくれ、ようやく診察、そしてMRIの検査となった。

嫁さんが点滴を打っている時に、別の場所に担当医師に僕だけが呼ばれた。嫁さんには「今日は入院が必要なので、旦那さんに手続きをお願いします」と看護師さんから伝えられた。僕が手を振ると、嫁さんは笑顔で手を振り返した。医師の元に行くと、こう告げられた。

「脳への放射線治療は効果が無く、脳の65%がガン細胞化しています。今は言語障害と健忘症の症状が出ていますが、今後は生命維持に関わる部分に及ぶ可能性があります。また肝臓への転移も進んでいるので、肝炎、肝硬変などの肝機能障害が起こり、黄疸、吐下血などが想定されます。骨への転移が進むと、激痛で動くことも出来なくなります。使える薬はもうありません。今奥さんに投与している点滴もただのブドウ糖です。年を越すのも難しいかもしれません。」

医師の口から告げられたのは余命宣告で、それもあと1ヶ月だった。僕は泣き崩れた。それまでずっと我慢してきたものが溢れ出てきた。人前であることを構わずに、とにかく泣き続けた。

嫁さんが何をしたというのだ?

誰に対しても誠実で、誰からも好かれている嫁さんが、何でこんな仕打ちを受けなくてはいけないのか?

子どもたちはまだ二人とも小学生なのに…。

こんなに愛しているのに、何で俺から嫁さんを奪ってしまうのか?

どこにも行かないでくれ…。

泣いていたことがバレないようにして、嫁さんのところに笑顔で戻った。「検査もしなきゃいけないから、今日から2〜3日は入院が必要みたい。後で着替えとかを持ってくるね」と言ったら、嫁さんはニコリと笑って頷いた。  

病院の駐車場の車の中で20分くらい泣いて、家に帰った。 

 

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